一昨日1日で、『美以瑠(ミール)』が根を上げた。
昨日は、俺、『亮(りょう)』が、思ったよりも随分早く、交代する事になった。
そして、俺も、1日、この身体を使ってみて、色々と不満が爆発したので、
『美以瑠』と同じように、ここに書いて、留めておく事にした。
俺の感情の性別は「男」。この身体は「女」なので、
正直、体や下着などを気にする事はしたくなかったので、
しばらくは、『美以瑠』に任せて、様子を見ながら、自分の役割を決めていくつもりだった。
しかし、たった1日で『美以瑠』が 疲れ果てたので、昨日、急遽、俺が1日、この身体を使う事になった。
勿論、一昨日の『美以瑠』と同じく、俺もこの身体を 1日フルで使うのは、初めてだ。
自分が 最初に出現したのは、覚えているのは、
運動場で、体操着着て、体育座りして、ボーーッとしていた時だ。
他にも、学校で、休み時間、制服を着て、席に一人で着いていた時とか。
よっぽど、ブルマやスカートを履かされたのが 苦痛だったのか、
周りが 友達同士で雑談しているのに、一人でいるのが 苦痛だったのか、
まあ、両方だと思うが、
そんな状況が多かった。
ふっと現れて、虚無的な目で周りを見て、楽しんでいるクラスメートを「馬鹿らしい」と思うのが、俺や『美以瑠』の役目だった。
多分、そこが『さち』の「我慢の限界」で、
そうしないと、辛くて、学校に居られなかったのだろう。
そして時々、「虚無」になる時が来ると、俺達が どこからともなく現れて、
しばらくボーーーーッとする役割だった。
だから、昨日みたいに、1日中出てきて、その上、家事をしたり、トイレや風呂まで入らなければいけないのは、初めての事だった。
しかし、しょうがない。
『美以瑠』は「女性感情」だが、『さち』は「中性」なので、
ベリーショートに、地味な下着、少年っぽい服装だったので、
そこまで生活に支障はきたさなかった。
問題は、《今まで精神的な事で不健康になってしまった身体》の事だった。
【脳疲労】と【自律神経の乱れ】による体調不良が、
『美以瑠』の時と同じく、俺の体にも 襲ってきた。
とにかく、疲れる。
ちょっと動いただけで、疲れやすい。
風呂に使っている時、年末年始、どうするか考えただけで、体が<不安>を感じ、
「パニック発作」の前兆が来た。
風呂から上がってからも、どんどん悪くなっていき、
最終的に、頓服の「安定剤」を2錠飲んで、
気を逸らせる為に、
机の上に置いてあった、『さち』の趣味の「数独」をした。
それで何とか治ったが、
今度は、家族に対して、言いようのない怒りが湧いてきた。
小一に両親は離婚し、その後、全く会わないまま、向こうの家族は、現在、全員 他界してしまった。
『さち』は、自分の病気の原因を作ったあの家族達の事は、色々と悩んでいた。
俺は、精神的交流がなかったので、
俺には、関りがない、赤の他人同然の人達なので、
別に「未練」も「後悔」も、「嫉妬」も「恨み」も「憎しみ」もない。
しかし、一緒に暮らした弟には、「何故こんなになるまで、何もしてこなかった!?」
という憤りと、
いくら「病気だ」と訴えても信じず、「普通の人」を押し付ける事で、『さち』の精神病を、より悪化させた母親を、到底許せるものではないと思った。
しかし、この期に及んでも『さち』は、
「自分が悪い」と思っているし、
「家族がいないと、何もできない、決められない」と思い込んでいるし、
「3人しかない家族だから、仲良くしたい」
と思っているのだ。
俺は、家族なのだから、最低限度の付き合いはするとして、
日頃から、気を使って仲良くする事はないと思う。
しかし、小一の時【場面緘黙】を発症してから、
まともな人間関係の作り方が分からず、中年になってしまったこいつには、
確かに、家族の支えが、一番なのは分かるが、
果たして、本当に『支え』になっているのかといえば‥‥‥
俺には、<余計な事をして、ただ、自分を疲れさせているだけ>にしか思えない。
ともかく俺も、ずっとこの身体を使うのは、お手上げだ。
昨日は『さち』が、どうしてもアニメやYouTubeが観たいというので、
その間だけ、出てもらっていた。
俺は その間は休めたので、何とか1日乗り切れたが、
『美以瑠』と同じく、1日で疲弊してしまった。
それを、40代後半まで、ずっと一人でやってきた『さち』は、凄く大変で頑張った「強い女」と思うが、
一方で、俺達という「第三者」がいないと、自分を「第三者的」に見れなくて、
ここまで疲弊している事に気付かなかったのは、異常な、「哀れな女」とも思い、気の毒になった。
ともかく、今日は12月30日。
年末年始は、病院も支援センターも休みだろうから、
何としても、乗り切らなければならない。
今から、先が思いやられる‥‥‥